高橋しんすけ議員報告 HOMEデータバンク賛成討論
 枚方市平和・無防備都市条例


※平成16年12月15日に総務常任委員会での討論です。

 ほとんど100%反対のような賛成討論ですが、議会では予算、決算を始め、各種案件においてよくある事です。
ジュネーブ条約に関する理解の仕方と自治体としての法解釈の仕方についておおまかなところが述べられたと思います。今後、全ての自治体で第59条を検討されることを希望します。 (高橋伸介)


賛成討論 枚方市平和・無防備都市条例 (2004.12.15 総務常任委員会にて)

赤字は条文、政府見解などを、青字・太字は今回のポイントです。

ひらかた市民会議を代表し、議案第38号に賛成の立場から討論を行います。

議案第38号の条例案には国際条約であるジュネーブ条約第一追加議定書が含まれておりますので、まず、ひらかた市民会議として基本的な立場を述べさせていただきます。

我が国は、日本国憲法の前文及び第9条において、政府の行為による戦争を放棄し、武力による威嚇、又は武力の行使は永久に放棄し、その為に陸海空軍、その他の戦力を保持せず、したがって交戦権をも明確に認めておりません。

正に、日本国憲法は日本国を武力の上では無防備地域としたのであります。9条が文言どおり誠実に実施されておれば、今回のように、戦争体験から生まれた人道主義に基づく戦争ルール集とも言えるジュネーブ条約を引用した条例制定運動は起こらなかったと思います。

戦後、時の政権は日本語で書かれている憲法の文言にもかかわらず、様々な都合のよい解釈を重ね、専守防衛の名の下に世界有数の軍備を保持するに至り、理由はどうであれ武装した部隊を海外に派遣しているところです。非戦、不戦の思いは私も強く共感するところですが、同時に国防については一定の必要性を感じているところです。

この事も議会制民主主義の下での民意であり、所定の手順に則って進められてきたもので、手続き上に、なんらの問題はありません。しかし、憲法9条と関連法との整合性については年をおって乖離してきており、法治国家として由々しき事態に有ると認識しているところです。時の政権に解釈をゆだねるのではなく、国民の思いを明快な形で表現する新たな条文が必要と認識している所です。

5年前、99年12月、私が本議会における一般質問でジュネーブ条約第一追加議定書59条に基づく無防備地域宣言の提案を行ったのも、実質的に改憲状態が先行している中で、有事の際には自治体としてどの様に住民を守ることが出来るのかを考えたとき、平和ボケといわれる現在の社会状況の中で、戦争のリアリズムから生まれたジュネーブ条約を学習する事は、単なる平和宣言や従来の平和施策よりもよほど効果的と考え、提案したものです。

今回、議案となっています枚方市平和・無防備都市条例の第一追加議定書第59条無防備地域については、条例案を出された方々、また意見書を添え提案された行政側、双方に第59条に対して誤解があると判断せざるを得ません。

枚方市平和・無防備都市条例は、平和施策に関する部分と第一追加議定書第59条に基づく無防備都市宣言に関する部分に分けられます。

まず、「平和」に関する部分につきましては、第5条(無防備地域宣言)を除いたほぼ全条文がこれにあたるかと思います。市長の意見書でも述べられているとおり、本市は永年にわたって平和施策を進めて来ており、現時点においては条例化を図る必要性はないと考えます。

次に、条例案第5条(無防備地域宣言)に係る部分についてはジュネーブ条約第一追加議定書第59条第一項では紛争当事国が無防備地帯を攻撃することは、手段の如何を問わず禁止するとされ、違反した場合は第85条により戦争犯罪とみなされます。第2項では4つの条件を満たす事が前提で「紛争当事国の適当な当局は、軍隊が接触している地帯の付近又はその中にある居住地で敵対する紛争当事国による占領のために開放されているものを、無防備地域と宣言することが出来る」となっています。ここで問題になりましたのは、紛争当事国の「適当な当局」に自治体が含まれるのかどうかが問題となりました。条約全体での文脈では「紛争当事国」という言葉が使われており、第59条にのみ「紛争当事国の適当な当局」としており、すなわち「国」に続いて「適当な当局」という言葉が挿入されている事から、概念として行政能力のある自治体も含まれます。又、原文を直訳しましても自治体または能力のある他の団体以外にありえません。

国の見解では「当該地域の防衛に責任を有する当局、すなわち我が国においては、国において行われるべきものであり、地方公共団体がこの条約の「無防備地域」の宣言を行う事はできない。」とされています。

当初、政府は「適当な当局」に自治体も含まれると認識していましたが、国内3000弱に及ぶ自治体の中には無防備地域宣言の前提となる4つの条件をクリヤすることが危ぶまれる実態の中で、宣言の主体を国に限定したものであろうと考えられますが、しかし来年3月から条約が発効するので条約文に沿った形で解釈の修正が加えられる可能性があります。

しかし、解釈の修正が行われるかどうかに関わらず国の解釈はあくまで解釈にとどまるものであり、法律として確定したものではありません。2000年の自治法改正により国と地方は対等な関係となっており、枚方市としても見解を出すべきであったと思います。今回、常に平和に尽力されている市長の意見書において国の解釈に従った意見を述べるにとどまった事は残念と言わざるを得ません。今後は今回の審議の内容を検討していただき、是非ともご自身の見解をお示しいただきたいと要望いたします。

続いて59条には「適当な当局は」の後に「軍隊が接触している地帯」という言葉があります。「接触」とは第一追加議定書第26条2項にありますように「接触地帯とは、敵対する軍隊の先遣部隊が互いに接触している地域、とくに先遣部隊が地上から直接砲火にさらされている地域をいう」と明確に規定されています。いわゆる「戦場」であります。その戦場付近又はその中にある住民の居住地において、敵対する紛争当事国による占領のために開放されている状態において初めて無防備地域を宣言する事が出来ると明確に規定されています。

すなわち、平和時には事前に準備は出来ても「無防備地域の宣言」をする事は出来ません。平時に相手国も前提とせずに「宣言」することはジュネーブ条約に記述はなく、何の効果もないばかりか、逆に国際条約としてのジュネーブ条約の背信行為にあたる可能性が生じます。ジュネーブ条約は戦争という極限の中でのルールであり、平和運動や平和施策では有りません。条例化を図る場合、59条に特化した条例ならば準備という側面で意味が生じます。ジュネーブ条約は主観的な平和運動や平和施策として考えてはいけない客観的な国際ルールであるとの認識が必要です。

次に市長の意見書にあります地方自治法第2条第2項を前提に同法第14条第1項に基づいてのご見解について意見を述べます。

同条第2条第2項は「普通地方公共団体は地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する。」とされ、また同法第14条第1項では「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することが出来る。」と、されています。一言で言いますと法令に違反する条例は作れないということです。そこで本市には法令の根拠のない条例はないかとお尋ねしたところポイ捨て防止条例をはじめ、いろいろと法令の根拠がないオリジナルな条例が存在している事がわかりました。自治体として住民の利益となる事は自治体の判断で条例化がはかれるわけです。

先に述べました国の条約解釈は法令に基づくものではありません。また、第一追加議定書59条は局地的、かつ緊急性がある場合を想定されており、正に住民に密着した自治事務そのものであると言えます。また、自治体には防衛予算も軍隊もないことから国の現行法である有事法、国民保護法、自衛隊法とも抵触するものではありません。

地方自治法第2条第12項には「地方公共団体に関する法令の規定は、地方自治の本旨に基づいて、かつ、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえて、これを解釈し、及び運用するようにしなければならない。」とされています。正に法令の解釈、運用権は自治体にあると明確に規定されています。市長の意見書では条約に基づいて条例を制定する事は想定されていないと述べられましたが、小泉首相風に言えば「だから出来る。」と言う事になります。2000年の自治法改正の精神にのっとり、住民にとってプラスかどうかの判断をいただきたい所でした。

以上の事により議案第38号については第5条(無防備地域宣言)を除く全文の削除、また第5条(無防備地域宣言)については、宣言者を枚方市から市長に変え、内容においても国の管理する国道、高速道路、河川などを除くなど枚方市の実態に合わせた内容にすべきである事を申し述べ、以上、私の会派の意見といたします。

今回、直接請求された、平和、護憲の思いをもたれる多くの人々が戦争を前提とした国際条約であるジュネーブ条約を引用された事を高く評価し、今後もジュネーブ条約の学習を深められ、平和運動を進められる事を希望し、この議案に対する賛成の討論といたします。

 


2004・12・17 本会議おける池上典子議員の賛成討論

議案第38号「枚方市平和・無防備都市条例案」に対しまして、「ひらかた市民会議」の見解は、先日の総務常任委員会での討論で、高橋議員から詳細に述べさせて頂きましたが、補足する意味で、改めて、私からも討論をさせて頂きます。

委員会審査の中で、条例案の第5条について見解が分かれました。これは、第5条の無防備地域宣言が「平和時に行うことを前提としているか。又は、非常時を前提にするか」によって分かれるものだと思います。

平和時に、無防備地域宣言を行っても実際的な意味がないのは明らかです。また、ジュネーブ条約第1追加議定書第59条が平和時の宣言を前提としていないだけに、国の防衛政策との整合性の関係から矛盾が出てくると思います。これは、市長の意見書の述べられるとおりであります。

しかし、相手国軍が真近かに迫り、我が国の自衛当局や中央政府機能が麻痺している極限状態において、地方自治体が住民の生命・安全を守るためにジュネーブ条約に基づいて「無防備地域宣言」を行うことは、必要なことであり、また、地方自治体の義務に属することだと思います。追加議定書第59条とこの条例第5条は、そういう非常時に、市長に対して住民を守る義務を明確にしようとするものであって、平和のあり方が問われている現在において、今、まさに必要な条例であると、私たちは考えます。

また、この見解が政府の公式見解に沿わないことは承知していますが、しかし、政府が自らの機能麻痺状態を想定した見解を述べることは考えられず、地方自治体が自ら条約を解釈して、しかるべき行動をとることが、当然必要であると考えます。

また、政府は、条約と地方自治体の条例の間に「法律」がなければならないという見解を取っているようです。しかし、地方自治体が、直接、「条約」に基づいて「条例」を制定できることは、地方自治の本旨からも、また、既に本市にも法律に基づかない条例が存在することから明らかです。

私ども、ひらかた市民会議は、現在の国際紛争のパターンが20世紀型の戦争とは異なってきている実態を踏まえ、枚方市における平和政策の新たな指針として、この条例が、今、必要であると考えます。

ただ、自衛隊が軍隊に該当するかどうかの解釈にもよりますが、平和時において、市に対して第3条の責務を課すことは、有事関連法との関連上、現実的に困難であるとも考えられ、一部の条項の見直しと明確化が必要だと思います。

以上、意見として申し添え、

「ひらかた市民会議」を代表し、署名運動を進められた「実現する会」の皆さんが、旧来型の平和運動から、より現実的で具体的なジュネーブ条約に一歩踏み込まれたことに敬意を表明するとともに、署名された1万8千6百21人の市民からの平和に対する熱い思いに答え、この条例案に賛成であることを申し上げ、討論とさせていただきます。

 


※いろいろ論議を呼ぶ無防備宣言ですが、こんな条例案ならばよいと思います。サンプルです。各自治体の実情に合わせてお直しいただけたら結構かと思います。

 

枚方市無防備地域宣言に関する条例 (サンプル)

 

(目的)

第1条 この条例は、1949年8月12日のジュネーブ諸条約に追加される国際的武力紛争の犠牲者の保護に関する議定書(以下「追加議定書」という。)第59条に規定する無防備地域の宣言(以下「宣言」という。)に関し、必要な事項を定めることを目的とする。

 

(無防備地域の宣言)

第2条 市長は、国際的武力紛争またはそのおそれが明白なときは速やかに宣言を行う事が出来るものとする。

      前項の宣言は、本市域全域について行うものとする。ただし、道路法(昭和27年法律第180号)第3条第2号の一般国道に指定された道路を除く。

     市長は、第1項の宣言を行ったのち、速やかにその旨を国及び追加議定書第59条第4項の紛争当事国に通告しなければならない。

 

(条件の遵守)

第3条 市長は、前条第2項の地域においてジュネーブ条約第59条第2項の条件を満たすように務めなければならない。

 

(委任)

第4条       この条例の施行に関し、必要な事項は規則で定める。

 

 附 則

この条例は、公布の日から施行する。

 

※この条例案のポイントは、首長に全ての権限を与えているところです。住民の安全に対して最後のカードを首長に託すわけです。したがって、「出来る」規定です。有事の際に宣言をするかしないかはみなさんが選ばれた首長の判断になるわけです。

第一追加議定書59条が想定する事態は、緊急かつ局地的な判断が求められていますので、政府や地域の軍が機能している場合、話し合う必要も生じます。したがって、条例案第4条にあるように、規則で定める内容も様々な有事を想定することが必要と思われます。

参考図書:「戦争のルール」 著者 井上忠男 宝島社 1300円 ※井上氏は日本赤十字社の方です。
       「国際人道法 戦争にもルールがある」 著者 小池政行 朝日選書692 1200円
       「国際条約集」 有斐閣 2800円 ※なんといってもこれが基本!熟読のこと。 

住民のみなさんの幸運を祈ります。・・・しんすけ

 

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