枚方談合事件
中央図書館改修工事入札に関する証人尋問


衣笠氏の尋問及び供述

公判メモを元に極力正確に再現しました。
※ 文中で「業務」とは、当時の大林組で「談合」を担当していたところ。
※ 本文中の( )内は私のコメント。(敬称略)

事 件 番 号 平成19年(わ)第4648号

第25回公判  被告人 中司 宏   被告事件名 談合   平成21年1月16日  

裁判長裁判官  樋口裕晃  
裁判官      橋本 健 、能宗美和

検察官      保坂和人 、川副万代

弁護人      後藤貞人(主任) 、陳 愛 、高見秀一

証人 衣笠 亨



証人宣誓  「良心に従って、真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います。」



検察官 (川副・かわぞえ) 証人は、枚方市が発注した仮称枚方市立中央図書館改修工事という工事の入札があったことは覚えてますか。

証人(衣笠亨氏) はい、覚えてます。

検 中央図書館改修工事というのは、平成16年1月15日に入札公告が行われて、同じ年の2月4日にその開札が行われていますが、その入札には大林組が参加したかどうか、それは知っていますか。

証人 はい、知っています。

検 参加はしましたか。

証人 参加しました。

検 その際の入札の手続といぅのは、大林組の中ではだれが行ったんですか。

証人 私が行いました。

 中央図書館の改修工事の入札に、大林組が何で参加することになったのかと、いきさつについて教えてもらえますか。

証人 入札の公告があった時点で、業務(談合の担当)のほうから、この入札について参加するかどうかというのは聞かれました。

検 それに対しては、どんなお答えをされたんですか。

証人 業務のほうから、入札経験も必要だろうということで、参加したらどうだというふうに聞かれたので、参加させてくださいというふうには答えました。

検 その当時、もともと枚方市の建築工事については、大林組の営業の担当というのは証人だったわけですね。

証人 はい。

検 中央図書館の改修工事について、入札に参加しようとか、受注を目指そうとかいうことは、事前に考えていたんですか。

証人 いえ、特には考えておりませんでした。

検 営業活動は何かしていましたか。

証人  いえ、しておりません。

検 そういう場合でも、業務のほうから参加するかどうかという確認があるものなんですか。

証人 そのときはありました。ほかは分かりませんが。

検 業務のほのうから、参加するかどうするかというのは、どういう意味で聞かれてるというふうに証人は理解したんですか。

証人 業務のほうで、その工事について話合いはされてたんだろうと思いますが、お付き合いという意味で、当社が参加するかどうかというふうに聞いたものだと思います。
   
検 お付き合いというのは、簡単に言うと、どういうことを言うんですか。

証人 当社が取るというのではなく、他社が取られるだろうという前提で、うちが入札に参加するという意味です。

検 先ほど、その話の中で、業務の人から、経験でしたか。

証人 そうですね。一度入札の経験はしておいたらどうだということです。

検 それは、どういう意味だったんですか。

証人 私自身、枚方市の入札というのに、応札は、参加したことはございませんでしたので、一度どういった書類が必要なのかというのも含めて、経験してみようという意味ですが。
   
 一度経験してみようと思った理由は、何かありましたか。

証人 当時、追い掛けてた工事というのは、その後の清掃工場とか火葬場の工事というのは目標にはしておりましたので、いずれ入札というのに参加する機会があるので、そういうのを一度経験しておこうとは思っておりました。

検 そのように業務の担当者の方と話をしたときにですけれども、中央図書館の改修工事について、落札する予定の業者に関して、何か話はありましたか。

証人 ありました。

検 どんなことを聞きましたか。

証人 業者名をたしか教えていただきました。

検 どこだというふうに聞いたんですか。

証人 たしか三井住友(三井住友建設)だったはずです。

検 そうすると、業務の人のほうから、そこが一応取る予定だということを聞いたという意味ですか。

証人 はい。

検 結局、中央図書館の改修工事の入札には、参加することにしたんですね。

証人 はい。

検 この公判で提出されている弁21号証の、その工事の入札執行調書によりますと、結果として、大林組は入札金額が3億5100万円で入札をしているんですけれども、この金額というのはどのように決定しましたか。

証人 業務からの指示に基づく金額です。
   
検 金額の指示なんですけれども、それは金額だけを教えてもらうということで指示を受けたんですか、それとも、そうではないんですか。

証人 金額と、その明細というか、データと、一緒にいただくことになりますが。

検 明細というのは何の明細、何のデータですか。

証人 内訳明細書を作るための資料ですね。

検 その工事の価格の見積りみたいなものでいいんですか。

証人  そうです。

検 先ほどのお話ですと、実際に入札の手続を行ったのは証人だということでしたね。

証人 はい。

検 実際に入札をしたときの金額というのは、どのような金額を記載したんですか。

証人 業務から言われてる金額をそのまま記載しておりますが。

検 入札が行われる時点でですけれども、大林組としては、その工事の落札、受注を目指すという気持ちはあったんでしょうか。

証人  いえ、ありません。

検 その入札が行われた後の出来事として、証人が何か記憶していることというのはありますか。

証人 はい、あります。

弁護人(後藤) 検察官、伝聞でないことをお聞きになるんでしょうね。今までも、すべて伝聞といえば伝聞ですけれども。

検察官 (川副) 伝聞とは何ですか。

弁護人 (後藤) 立証趣旨との関係では、それは伝聞でしょう。ですから、それはあえて異議を申し上げなかったんですけど、後のことを聞かれるというんなら。

検察官 (保坂) 後から聞くのは、全部証人が体験したことを聞いていきますから。

弁護人 (後藤) 体験したのはいいんですけれども、体験したことと立証趣旨との関係では伝聞でしょうと申し上げてるんです。前のは、いいと言ってるんです。この後で聞かれるのは、伝聞ではないですかと。

裁判長 異議がある質問が出たら(その時に)異議を言っていただくと。検察官もその点(弁護人の指摘)を注意しながらやってくだい。

検察官 (川副) 質問は、先ほど入札が行われた後の出来事として、証人が特に記憶してることはありますかということだったんですが、それはありますということですね。

証人 はい、あります。

 それは、どういう出来事があったんですか。

証人 入札の後、枚方市のほうへ事情聴取というか、呼出しがありました。

 それは、何で呼び出されたんですか。

証人 事前の受注調整の疑いがあるということで、その事情を教えてほしいということで。

 それに対応したのは、大林組の中ではだれだったんですか。

証人 私と、当時契約課におりました○○○○という副部長と一緒に、同席させていただきました。

 そうすると、事情を聞かれた際に、証人が実際に枚方市のほうに行ったということなんですね。

証人 はい。

 事情を聞かれる以外に、そういう趣旨で調査を受けて、何かしたことというのはありましたか。

証人 それ以外でですか。

 事情を直接話す以外でですね。
 
証人 そのとき以外では、枚方市と話すことはなかったですが、明細とかを持って説明いたしました。

 明細というのは、何のことなんですかね。

証人 入札は、札(ふだ)といいますか、大きな金額だけで入札しますが、それのもう少し細かな内容ですね。そういう内訳明細は約200ぺ一ジぐらいあるんですが、それを持って見積り内容を簡単に説明いたしました。

 その200ぺ一ジぐらいある見積りの明細ですか、それを枚方市のほうに提出したということになるんですか。

証人 そうです。

 その見積りの明細ですけれども、見積りの明細というのは、どのように準備したんですか。

証人 業務から事前にいただいてるデータというか、見積りの資料のようなものがあるんですが、それに基づいて、当社のフォーマット、様式に直して、提出金額に合わせて見積りは作っております。

弁護人 (後藤) この中央図書館は、お付き合いだったということですね。

証人 はい。

 お付き合いというのは、落札する気はないけれども、一応、応札すると、そういうことですね。

証人 そういう趣旨です。

 そうすると、金額は、落札を予定しておられる三井住友(建設)のほうが、こういう価格で入れてくださいということを言ってくると、こういう流れになるわけですね。

証人 業務上、どういう話の流れになっているかは分かりませんが、私は業務のほうから数字を教えていただいてるという形になります。

 通常、お付き合いというのは、そういう形になるんでしょうか。それぐらいの知識はおありになるんじやないですか。(あなたの証言は談合当事者ではなく、伝聞で意味ないですよ・・・という皮肉)

証人 多分そうだと思いますが。

裁 判 官 (橋本) 今の図書館の工事に関しては、少なくとも、あなたは事前に受注のための活動はしていないということでいいわけですか。(あなたは談合当事者ではないと言うことで間違いないか)

証人 はい。

 それは、あなたの知ってる範囲(伝聞)では、あなた以外の大林組の人も受注に向けての活動はしていないということですか。

証人 はい、しておりません。

 受注に向けての活動をしなかった理由というのは、どういう理由になるんですか。

証人 特に目標工事に挙がってなかったということです。

 特に関心は持ってなかったということですか。

証人 はい。

 ただ、そういう工事があるという知識はあったんですか。(伝聞として知っていたのか)

証人 それは、そういうのは分かってました。

 分かった上でやらなかったということですか。

証人 はい。

 この図書館の工事に関して、初田市議から何か資料提供を受けたということはありますか。

証人 ないと思います。

 以上。


平成21年1月16日
大阪地方裁判所603号法廷にて