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公民館存続の賛否を問う住民投票条例の制定について、反対討論を行いました。06.09.25本会議最終日

住民側(利用者側)で占められた満席の傍聴席はブーイングの嵐でした。

皆様はこの討論をお読みになってどのように感じられますか。



議案第42号 公民館存続の賛否を問う住民投票条例の制定について反対の立場で討論を行います。

枚方市は公民館を生涯学習によるまちづくりを進める拠点施設として再編するため、枚方市立生涯学習市民センター条例の制定についての議案を9月12日に議会に提出しました。条例には、手続き上、改変に伴い公民館を廃止することが記述されております。
この議案に関連し、議案第42号は、住民が直接請求(参考:有権者の50分の1以上の有効署名で請求できる。枚方市の場合6月2日現在で有権者数325085名で請求には6502名の署名が必要)によって、公民館存続の賛否を問う住民投票条例(参考:一般的には有権者の3分の1から8分の1の署名数が必要とされている)の制定を求めるものです。
日本国憲法と地方自治法には代表民主制を補完する為、様々な直接民主制度を用意しているところでございます。
この度、住民の方から直接請求制度により公民館の存続の賛否のみに限った個別設置型の住民投票条例案が上程されましたので、住民投票条例全般直接請求時の署名請求代表者の意見陳述の3点を中心に今回の住民投票の必要性について検討をいたしました。

1点目としまして、常設型の住民投票条例につきましては市長の「意見書」(末尾に参考としてリンクしてます)にもありますように議会と市長による代表民主制を基本とする地方自治制度にあって、これを補完し、住民の市政参加を促進する上で有効な手段とのご意見には、私どもの会派全員異論のさしはさむ余地がないところであります。
総務常任委員会での資料の中で常設型住民投票条例対照表が配られましたが住民投票の対象事項や発議の方法、投票資格者、投票方式、成立要件などは、なるほどと納得できる内容が記載されていますが、今回上程されました住民投票条例には公民館の存続についてという極めて限定された内容であります。
示された条例案には住民投票にとってきわめて重要な「成立要件」もなく、仮に10%台で投票が終了しても開票の必要があり、公民館の存続についての多くの住民意志の反映が正確に担保されない懸念があることは無視できません。

より明確に申しますと一般的に投票で多数を占めることよりも、特定団体・個人の意見のみが際立つプロパガンダ、主義・思想の宣伝に利用される恐れも拭いきれません。成立要件のない今回の住民投票条例は致命的欠陥を抱えていると指摘せざるを得ません。

また、今回の住民投票条例が常設型住民投票条例に必要な「自治体運営上の重要事項」、「自治体運営に重大な影響を与える事案」などに値するかなどは住民投票に多額の税金(参考:事務費のみで約6900万円)を使用する以上検討が必要です。
例えば、委員会の質疑のなかで示された、自治体合併、原子力発電所、米軍基地、可動河口堰、産業廃棄物処理場、などは直近の選挙での争点となっていなかった場合、選挙後の市長や地元議員や議会だけではなく、住民総意の確認の必要もありましょう。

今回の住民投票条例は公民館の存続に限っての投票を求めるものですが、市が進めておられるのは意見書にもありました通り「生涯学習推進体制の再編」であり、これに伴う「施設の再編」であります。存続に限っての投票では住民に誤解を招く恐れがあります。

公民館の建物を無くすわけではなく、売却でもなく、今までの貸し室の利用者は有料となりますが引き続き利用でき、今まで利用できなかった市民も使えるようになります。また、ロビーでの囲碁や将棋も今までどおり無料です。変わりません。

有料の中身も午前9時から午後12時半まで、30人定員の会議室(45u前後)の場合、基準額は700円程度。各貸し室の定員で利用した場合、1人当たりの負担額は13円から80円と負担額は非常に低い金額に抑えられています。今までの利用者が極めて不利になる再編とも思えません。即ち住民全体の利害にかかわる事はなく、住民投票にかけなければならない理由が認められません。

2点目としまして直接請求時の署名についてですが、委員会の質疑の中で公民館の年一回以上の利用団体数2623団体、会員数76633人との事でした。重複されている方の人数がわからないのですが、今回の署名数26250名の数字は団体会員数の約3分の一となります。

私は署名活動をされているとき、何度も署名の依頼を受けましたが、その時おっしゃっていたのは、公民館が無くなります。有料化されます。公民館廃止の反対をお願いします。使えなくなります。などのお言葉でした。多くは市の施策には触れられず何も知らない利用者がお聞きになれば多くの利用者は署名されるのではないでしょうか。
また、禁じられている公民館の敷地内での署名活動をされていた事も確認しております。直接請求に必要な署名数はクリアしておられる事は間違いないと思いますが、署名数が公民館全会員数の3分の一に止まっている条例案をなぜ住民投票に掛けなければならないのかと言う疑問は残るところです。

3点目としまして、請求代表者の意見陳述についてですが、請求代表者の意見陳述は、住民投票条例を出される事になった主たる理由に当たります。5名の方が意見陳述をされたわけですが、公民館に対する個人的な「思い」を除きますと、
●公民館において公民館運営審議会や公民館活動委員会を無視し、社会教育委員会が勝手に決めた。
●枚方テーゼの総括もないまま社会教育から市長部局へ移す事は許されない。
●行革の名の下に公民館を廃止、説明不十分
●社会教育つぶし、公民館つぶし
●公民館は市の施設ではなく市民のもの
などのご批判は、市長の意見書をお聞きすると全てあたらないように思います。

昨年、私は文教常任委員長を務めており、社会教育委員会の答申は教育委員会として独立性を保たれた中で、公民館を教育機関としての位置づけの廃止を議決された答申であり、手続き上問題はありませんでした。
しかし、陳述人のご指摘もあった説明不足は私も感じるところであり、市長は昨年の12月議会への提案を見送り、今日まで精力的に話し合いの場を持たれ、理解を求める事に勤めてこられてきました。この事についても行政側に住民投票に図るような重大な瑕疵があったとは言えないように思います。
また、枚方テーゼ、テーゼとは広辞苑によりますとドイツ語で政治運動・社会運動において活動の根本方針を示す綱領。とされており極めて政治的なものですが、本市の元助役である井上隆成(たかしげ)氏が社会教育課長補佐をされていた時にご自分の社会教育観の確立の為にまとめられたものが中心となり、当時の社会教育委員さんの意見も入れて昭和38年に出されております。
枚方テーゼについては、私は当時の時代情勢を踏まえますと、深く内容も吟味できるものですが成り立ちも含めこの場で肯定も否定もできません。総括をするような性質のものではなく枚方における社会教育の歴史の1ページです。

ただ、現実には平成11年度の「ひらかた市政概要」、社会教育のところに枚方テーゼが載っておりました。当時、私が議員になって各事業精査をしていた時、枚方テーゼとは何か、と教育委員会に尋ねたところ、今は枚方テーゼの概念ではなく生涯学習です。との回答をもらい記載の是正を求め、平成12年度の「ひらかた市政概要」の社会教育から枚方テーゼは姿を消し、変わって「生涯学習社会の実現を図る」に変わっています。以後、新たな公文書から枚方テーゼはありません。
その後、平成15年に「枚方市生涯学習ビジョン」が出され、「公民館においては従来の事業・運営のあり方を見直して、生涯学習を推進する環境づくりを行う」という方針が出されています。より明確に申しますと枚方テーゼは一定の役割を終え、古典となり、生涯学習に進化したと言う事ではないかと思います。
また、生涯学習市民センターとなっても、これまで通り社会教育事業を行えることは条例により担保されています。

以上、3点を中心に検討してまいりましたが、今回上程されました住民投票条例案が一般的に住民投票の対象とならない事項とされている、「特定市民・地域関係事項」にあたるのか、より明確に申し上げますと住民全体に関係のない事項にあたる可能性も払拭できないところです。

以上の結果、議案第42号 「公民館存続の賛否を問う住民投票条例の制定について」は、住民全体に直接の利害関係が発生するとは考えにくく、住民投票の必要はないとの結論に達しました。議会の責任において適正な判断を下すべきである事を申し上げ反対いたします。

最後に中司市長に申し上げます。中司市長の意見書の冒頭におきまして、市長は住民投票について議会制民主主義を補完するものとして有効な制度と評価されています。
また、総務常任委員会質疑の中でも、資料として配られた常設型住民投票の説明を「先進市では」との枕詞をつけ説明されました。これを機会に是非、常設型住民投票条例をご提案いただきますよう要望し、私、高橋伸介と伏見隆議員の討論といたします。

参考:市長の「意見書」については市のHP「市長室へようこそ」の発言集にアップされています。

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